「あー、なんか食いてぇ。腹減った」
タクは飲み干した缶をクシャリと握り潰し辺りを見渡す。
そう言えばお昼前に唐揚げを摘んだだけだ。
さすがに夕方に近づいてくると、あたしも何か食べたくなった。
「出た所にお好み焼きあったぞ」
晃くんがそう言うとタクは直ぐに立ち上がって伸びをする。
「そこでいいから行こうや。腹減りすぎて無理」
スタスタと歩き出すタクに続いて晃くんも足を進めた。
「音羽、うちらも行こうや」
「うん」
ホテルを出て少し歩いた所に一件のお好み焼き屋が見える。
店に近づく度に漂ってくるお好み焼きの香ばしい匂いで、よりいっそうお腹が空いた感覚に襲われた。
「ちょっと待たなアカンねんて」
ドアを開けて顔を覗かしていた晃くんは顔を引っ込めてあたし達を見た。
「え?マジ?どれくらいなん?」
「20分くらいらしい」
「マジかよ」
小さく舌打ちしたタクは腹を擦って入口に備えてあるベンチに腰を下ろした。
それにしても暑過ぎる。さっきシャワーしたばっかりやと言うのに今にでも額から汗が落ちそう。
隣でパタパタとウチワを仰ぐ千穂の生温かい風があたしの頬を掠めていく。
ボンヤリと海辺を眺めていると、カチッと聞こえた小さな音であたしはそっちに目を向けた。
「晃、やめーや吸うの」
千穂の呆れた声が飛ぶ。
煙草に火を点けた晃くんはフーっと白い煙を吐き出した。



