天使の瞳


「やっぱ怒ってたな」

「怒ってへんやろ。ジュース奢っときゃ大丈夫やろ」

「タクって本間、素っ気ないよな。だから女に簡単に振られるねん」

「つか、俺やから」

「へ?」

「振られたんじゃなくて俺が振ったから。そこ、間違えんなよ」


ツンと人差し指で突かれたあたしの頭がフワッと一瞬揺れた。


「え、そーなんや」

「そうそう。身体の愛称合わんかったし」

「ちょ、何それ。そんなんいちいち言わんでいいわ!この変態!!」

「ま、それは冗談やけど、男ってそんなもん。女のお前には分からんわ」

「そんなん分かりたくもないし」


フンっとそっぽを向く先に見えたのはニコニコしている千穂の顔。


「何?どーしたん、そんな拗ねて」

「別に」

「また拓斗になんか言われたん?」

「別に」

「音羽、別にって言葉好きやなー」


千穂はケラケラと笑ってあたしの隣に腰を下ろした。


「拓斗も音羽ちゃん虐めんなや」

「イジメてねーわ。ただの愛情表現」


何が愛情表現やねん。愛も何もないくせによく言うわ、本間に。


「だって、音羽ちゃん」


タクの隣に座っていた晃くんが覗き込む様にしてあたしを見る。そんな晃くんの姿さえフイっと顔を逸らした。