「はい」
男女別れる通路の前でタクは持っていたサンダルを渡す。
それとは交換にあたしは袋に詰め込んである着替えをタクに手渡した。
「サンキュ」
「タク、あたし遅いかも。髪も洗いたい」
「おう。ええよ。中の休憩所にでもおるわ」
「うん」
タクと別れて行った場所は本当に温泉だった。着替える所もどこにでもある温泉の着替え場。
海専用だけであって、当たり前に海から上がって来た人達ばかりだった。
とりあえずベタベタする海水を流そうと、あたしは身体と髪を洗った後、温泉に浸かった。
ありえないくらいのその快感に思わず笑みが零れる。
あまりにも気持ちがよすぎてどれくらいのんびりしていたのかも分かんないくらいだった。余裕で30分は過ぎていると言う時間にあたしは慌てて着替えて備え付けてあるドライヤ―で髪を乾かしてタクの元へ向かった。
ホテルの中に入り、フロントを通り越して見えるのは休憩所。
そこに見えたのはソファーでくつろいでいるタクが居た。
「ごめん、遅くなった」
コーラを片手に見上げてくるタクは、「マジ遅ぇ…」と呟いてフッと笑った。
「ごめん」
「別に怒ってねーし。…なんか飲めば?」
差し出してくる手に自分の手を差しだすと、そこには120円が置かれる。
「いいの?」
「おぅ」
「ありがと」
荷物を置いて自動販売機に向かったあたしは、そこに並ぶジュースを見つめた。



