食べ終えたかき氷のカップを捨てようと立ち上がった時だった。
座っていた石に手をついた瞬間、手に小さな痛みが走った。
すぐに視線を向けると意味もなく落ちてくる赤い液体にゾクっとする。
とすると同時に視界に入ったその人物にドクンと心臓が波打った。
今、一瞬だけ見えた様な気がした。
ドクドクと高鳴る心臓。
咄嗟に辺りを見渡すと、人ばかりで気の所為だったんだろうかと思った。
最近、なんの現象もないから少しだけ気分も楽になってた。
だけど、指先から落ちる赤い液体に真夏の身体が急に寒くなってた。
「音羽っ!!」
ドンっと揺れる身体の衝動。
その所為でさっきよりもビクンと身体が上がる。
強張らせたまま視線を送ると、あたしを押したであろうタクが口角を上げて立っていた。
「やめてよ、タク!!ビックリするやん!!」
「ボーっとすんなよ」
「……」
「つか、お前どーしたん!?」
ポタポタとたれ落ちてくるその指先にタクは視線を向けて声を上げた。
「切った」
「切ったちゃうやろ!!はよう洗えや!!」
「だって水道ないんやもん」
「こっち」
かき氷のカップを手にしている腕をタクは引っ張って足を進めて行く。
ワイワイ騒いでる人混み。楽しそうに花火を見上げてる人達。
はっきし言ってそー言う気分にはなれへん。



