「千穂、行ってきたらいいやん」
「行ってきたらって、あたし一人で何するんよ」
「何って、タクも晃くんもおるやん」
「おるやんって、あの二人は楽しんでるもん」
寝転んでいた身体を少し上げると、遠くの方でサ―フボードを抱えた二人が目に入った。
つか、海に来たんもボード目的やん。
フーッと息を吐くと、ヒョイと取られた麦わら帽子が千穂の手にあった。
「このギャル女」
「ギャルちゃうし」
「なー、音羽?」
「はいはい分かったよ。じゃあ日焼け止め塗って?」
「いいよ」
鞄の中から日焼け止めを取り出し、着ていたTシャツを脱ぎ捨てる。
二回目の日焼け止めがなんだかベタベタと肌に纏(まと)わりつく。
「はぁ…焼けたくないなぁ」
「音羽、色白やからな」
「だから嫌やねん。シミ目立つし」
「いいやん白いほうが色っぽいし」
「そー言う問題じゃないけどな…」
千穂に日焼け止めを塗ってもらいサングラスを取ってロングの薄い茶色の髪をてっぺんで束ねると、さっき膨らませた浮き輪を手に持った。
「なんか、音羽エロくない?」
千穂はイヤらしい顔であたしを見つめる。



