「さすがだな。魔導の国と謳われるだけあって、自然の力を見極める目が備わっているのか──。混乱はリオピアだけではない。世界各地に広がっている。だが、人の力で何とかしようと試みた国ほど、ひどい被害を受けている」

「そうですか」

「人がこの世界に生きる価値があるのか、何者かに問われているようだ」

「──」

「お前はどう思う?」

「価値なのかはわかりませんが、生まれてきたこと、生きようとする力があること、それだけで十分だと思います」

 ユニスの答えは、シンプルだった。リュールも「それについては同感だ」と笑った。

 食事が運ばれてきて、リュールは食べ始めた。

「ノールが『特別な客人』が来ていると話していたが」

「由貴たちのことですか?」

「ああ。何者だ?」

「こちらの世界──カウフェリン・フェネスを最もよく知る者です」

「…何だそれは」

「私たちの世界は由貴の想像力の中のものだということです。創造主のようなものですか、と聞くと「そうだ」とお答えになりましたが、神なのですか、と聞くと「違う」とお答えになりました」

「──待て。それはこの世界にとんでもない力を振るうことの出来る存在ということじゃないのか?」

「そうです」

「ありえん。なら、この世界に災いがあるのは由貴の采配のせいではないのか?」

「ある意味そうだと思います。ですが今起こっている災厄は由貴によるものではありません。それは由貴が万能の存在ではないことを意味します」

「どういうことだ?」

「由貴の物語──つまり私たちの世界の歴史のことですが、それが由貴の意図していない他者の意図が混ざり込んでいるというのです。その意図が混乱や矛盾を引き起こしていると」