不思議電波塔




 話は尾形晴が由貴に言ったひとことから始まり、四季と忍が晴に会って四季だけが先に消されることになったこと、その頃由貴と涼はシェネアムーン、チョコレート人形の揺葉忍、フェロウに会い、話を聞かされたこと、その後ゲートを飛んで由貴と涼は忍のところに行ったこと、尾形晴に襲われてまとめて飛ばされたこと、それを由貴と涼、四季と忍から代わる代わる聞かされて、隆史と早瀬と智は何とか納得したようだった。

『じゃあ何なの、あんたたち、こっちに戻って来られるのはいつになるの?』

 早瀬が問い詰めると、四季が「わからない」と正直に答えた。

「わからないけど…待ってて。戻れるように考えているから」

『その尾形晴って子も何なの。そんな物騒な子がこっちにいるんじゃ、あんたたちみたいなわけのわかんないことになる人間がまた出るってことじゃないの?』

「──。うん。ないとは言えない。でも、あんな能力を持った人間は、普通の人間では応戦出来ないと思う。だから困ってる」

 そう四季が話すと『あーあ、つまんないのぉ』と隆史と早瀬の間からひとりの少年が顔を見せた。

『先生にもバレちゃったー。あは。ねぇ先生、先生たちも由貴くんのとこ、行きたい?ねぇ』

 携帯画面のあちら側もこちら側も凍りつく。

 やがて由貴が「尾形晴」と声を絞り出した。

「お前、いい加減にしろよ」

『いい加減って、手加減してあげてるじゃない?先生たちがまだ無事なんて、僕って超優しいと思わない?あはは。素敵ー』

「──四季、怒ってる」

 ふと、ユリが発言した。

 尾形晴は笑いを止めて、ユリを見る。

『あれぇ?チョコレート人形の忍ちゃんだ。君も何だかんだ、世界を飛ばされちゃったら、僕には敵わないってことだよねー』

「敵わなくなんかない。ぼくは四季に会った。だから、もう、何処にでも行ける」

 言うなり、ユリが四季の携帯にすっと手を伸ばした。

 つるりとユリの身体が携帯へと吸い込まれ、向こうの世界へと移動する。

 携帯から出てきたユリを見て、隆史も早瀬も智も──無論尾形晴も瞠目する。

 ユリは尾形晴の胸ぐらを掴み上げると、思いきり殴った。

 殴ったと同時に尾形晴の姿は幻のように消滅した。