料亭で早瀬を乗せて、コンビニに来るまでの隆史の行動は迅速だった。
先に料亭に連絡を入れていたのが良かったのかもしれない。
早瀬は和服から私服に着替えて動きやすい格好になっていた。
隆史がコンビニの駐車場に停めると、店内にいた吉野智はすぐ気づいて、店の外に出てきた。
「先生!来た!…あ、こんばんは」
助手席に乗っている早瀬を見て智はぺこりとお辞儀をする。早瀬も会釈を返した。
「こんばんは。四季の母の綾川早瀬です。ありがとね、吉野さん。隆史から話聞いた。四季たちが携帯に映ってるんだって?」
さっき料亭にかけた時とは打って変わって親しみやすい口調で早瀬は話しかけてきた。
隆史もそうなのだが、早瀬も話しやすい人柄なのかもしれない。
吉野智はほっとしながら携帯をふたりに見せる。
「これなんだけど」
携帯の向こうでは、リオピアの宮廷に着いた由貴たちが映っていた。
司教らしい服を着た四季が由貴たちの服を用意しているようだ。
「何だい、これ…?」
「確かにファンタジー映画…」
画面を見た早瀬と隆史は愕然とする。
智は「ははは」と渇いた笑いになった。
「この状況をねー、どう説明していいものかわかんなくって。あ、話しかけようと思えば出来るんだけど。──おーい、四季ー!!今、そこ、何やってんのー!?」
智は携帯に向かって叫んだ。
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