「──どうしようかな…」
早瀬に連絡をして後、智は涼の家にも連絡した方がいいんだろうか、と悩んだ。
四季は男だからまだいいが、涼は女の子である。親は心配するだろう。
だがこの状況をうまく説明出来る言葉が見つからない。
「困った…」
椅子の背もたれにのけ反って、途方に暮れていると、電話が鳴った。
智はおもむろに電話に出る。
「はい。吉野です」
『遅くにすみません。智さんの担任の──』
「先生?」
綾川隆史だった。
「あ、あれ?吉野さん?本人?ごめん。携帯にかけたんだけど繋がらなくて──」
『ああ、私の携帯、ちょっと変なことになってて。先生が見たらひっくり返りそうなムービーが展開されてるんだけど』
「どんなムービーなんだろう」
『先生が激愛してる由貴くんと四季くんと涼ちゃんと忍さんが、携帯画面の向こうでファンタジー映画のような状況になってるっつったら、信じてくれますかー?』
由貴、四季、涼、忍、智の5人は、以前隆史の運転する車で休日に出かけたことがあるくらいには仲が良い。
それで智も隆史にはかなりくだけた感じで話しかけてくる。
隆史にはそのままの状況を伝えやすいため、智にとってはありがたかった。
「ファンタジー映画のような状況って…。な、何で?吉野さん、本気で言ってる?」
『本気ですともー。これね、私の携帯見た方がいちばんわかりやすいんだけども。こんな変な状況って初めてよ。先生ち行こうか?私、出られるよ。友達がまだ家に帰ってないみたいだからって、うちの親にはそのまま言えばいいし』

