不思議電波塔




「由貴!」

 涼を抱えて座り込んでいる由貴に、四季の声が飛ぶ。

 天馬からふわりと降り立つと由貴のそばまで来た。

「涼ちゃん?大丈夫?」

「…四季くん」

 四季の身体が柔らかい光を帯びている。四季が涼の手を取ると涼の身体が四季と同じ光を帯びた。

 涼は自分の身体が光っていることに戸惑った様子になったが──やがて起き上がった。

「…気分、良くなった。四季くんが持って行ってくれたの?」

「うん。ここに近づくにつれて、由貴と忍が涼ちゃんのこと心配していることが伝わってきた。僕が涼ちゃんの手を取ったら良くなると思ったから、そうしただけ。もう大丈夫だよ」

 由貴と忍もほっとしたようだったが、ふたりの表情にも疲れが見られた。

 四季は由貴の手を取る。

「めずらしい。由貴が疲れてるなんて」

「四季は元気そうだね。そっちもめずらしいけど」

「僕が飛ばされたところ、運良くリオピア王宮だったから」

「何それ…ズルい」

「そんなこと言う?僕は僕で心細かったんだけど」

「…そっか」

 四季に手を取ってもらっていると気力が回復してくるように感じて、由貴自身が四季に訊いてしまう。

「何?四季、本気で魔法でも使えるの?」

「由貴が元気になるといいなって思っただけ。ふふ、元気になったでしょ?」

 四季は簡単にそういう言い方をする。由貴は四季の言葉通りに思うことにした。

 良くなって欲しいと思ったから良くなった。それだけである。その方がわかりやすい。

 やがて四季は忍の方を見た。

 目が合って、四季からも忍からも言葉を発さない。

 言葉にならない、そういうことがあるのだ。

 四季は立ち上がると、忍に歩み寄った。

 ──忍の背に腕を回し、抱きしめた。



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