不思議電波塔




 綾川隆史からの電話を切り、吉野智は首を傾げた。

(デートったって、会長も涼もこんな時間まで外出歩くとは思えないけど──)

 由貴はそのあたりはきちんとしている。外で過ごそうが室内で過ごそうが、19時を過ぎると涼に「家まで送る」と言ってくれるらしい。

(まさか会長、涼と──いやいやいや)

 もしかしたらとよぎった妄想を智は打ち消す。

 四季か忍なら、由貴たちのことを知っているんじゃないかとも思ったが、それなら隆史が直接四季や忍に聞いているだろう。

(ま、大丈夫っしょ)

 風呂あがりの髪をタオルで吹きながら、演劇部の台本を開く。台詞を覚えないといけないのだ。

 数分後、台本に集中しはじめた頃に、智の傍らが眩しく光り始めた。

 閉じた携帯から光があふれている。

(は…?)

 着信なんかではこんな光り方はしない。携帯全体が光を帯びているようだ。

 智は携帯を広げた。





『忍、由貴、涼ちゃん、吉野さん…?』

 音声が入る。携帯画面ではムービーが展開され始めた。しかもそこに映っているのは。

「四季じゃないのか、これ…?」

 司祭のような服を着ている。傍らには金髪の少年と銀髪の少女がいた。

 四季らしき人物が、名前を挙げると、光の道が一層きらめき立った。

『明るくなった。本当に僕に繋がっているんだ』





 智は呆然とそのムービーに見入ってしまう。

 天馬の姿に変わった少女が司祭の装いの人物を背に乗せ、走り出した。上方を金髪の少年が飛翔しはじめる。

 何が起こっているのか。

「なんじゃこりゃ…」

 智は呟き、胸騒ぎがして、四季の携帯にかけてみようと、操作しようとした。

 だが操作ボタンはきかず、ムービーはつきっぱなしだ。

 智は携帯に向かって叫んだ。

「おい!四季!役者志望の人間にケンカ売ってんのかコラ!何だ、その本物の映画みたいな設定!」



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