「…綺麗って何」
なかば怒ったように由貴は呟いた。
「俺は自分が綺麗か綺麗じゃないかなんて知らない。ただ、人を故意に傷つける類いの人間が許せないと思っただけだ」
「──会長」
「四季が消されてるのに頭にも来ないとしたら、俺は綾川由貴なんかじゃない」
由貴は何を思ったのか、いきなり海に向かって歩き出した。
「ちょっ…由貴!?」
忍が驚いて、声を投げる。
由貴は叫んだ。
「俺の書いた物語なら、四季に繋がるだろう!道らしい道が駄目なら海を渡る!」
「会長…っ」
涼がなりふり構わず海を行こうとする由貴を追いかける。
忍はどうしていいのかわからない。たまらず叫んだ。
「四季!!いるんでしょう!?由貴を助けて!!」
と──。
サアアァッと光が雲の隙間から射し込んできた。
海の向こうまで水面に光の道が敷かれ、由貴たちは瞠目する。
いつのまにか由貴はその道の上に立っていた。
水面は風吹き抜ける草原のようだ。
「──道だわ」
フェロウが忍にウィンクしてみせた。
「繋がっているな。確かに」
「え…」
「気持ちだよ。『助けたい』も『助けて』も、相手なしには起こり得ない。今のはあんたがたが自ら綾川四季への道を作ったんだ」
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