ユニスとイレーネは興味深そうに携帯画面の忍を見て、四季に携帯を返した。

「綺麗な方ですね」

「うん。『あちらの世界』って想像もつかないように思えるんだけど、本当にあるんだね」

 四季には『こちらの世界』が不思議なことが多いように、ユニスとイレーネには『あちらの世界』が不思議なのだろう。

 でも『想像のつきにくい』世界のことが実感を伴った世界として考えられるようになるとしたら。

「今度は見える?」

 四季はもう一度、ふたりにグラスを見せた。今度はふたりとも大きく頷いた。

「見える。すごい。彼女、この世界にいるの?」

「え…。うん。この世界にいるってどうしてわかるの?」

「この世界ではないものを映すことは不可能です。私が四季のいる世界を水鏡などを通してもまだ一度も見たことがないように」

「──」

 忍がこの世界にいる。

(どうして)

 あの後、尾形晴と何かあったということなのだろうか。

 忍は今どうしているのだろう。

 考えると、いても立ってもいられない気分になってきた。

「僕、忍を探さなきゃ…」

 グラスに映っている忍は無事であるように見えた。

 でもその映っているものが今の忍を映しているのではないかもしれない。

 四季が思い詰めた表情になるのを見て、イレーネが声をかける。

「待って。この世界のことを知っている私たちがあなたの彼女のことをもっと深く認識していれば、彼女はこの世界に『在るもの』として繋がることが出来る。私たちが彼女の存在を立証することが出来るから」

「存在の立証…。それは可能なの?」

 四季がイレーネに問うと、イレーネは迷いなく微笑んだ。

「四季は私のことを知っているし『四季』と名を呼べば返事をする。ユニスに『四季』と呼んでも返事することはないし、今まで辿ってきた四季自身の思い出を語ることもない。存在というのは唯一無二のもの。他の者にとって代われるものなどない」