食の細い四季だが、用意された食事はすんなり食べることが出来た。
宮廷料理でも振る舞われるのかと緊張していたら、どちらかというと家庭料理に近いような料理で、食べやすかったのである。
自分の皿に取り分けて食べるような料理ではないのも良かったのかもしれない。
「あ…良かった。美味しかった?」
イレーネがほっとしたように四季を見る。四季は笑顔を返した。
「うん。シチューみたいだった。あ…ここでもシチューって言って通じるのかな」
「通じるよ」
「じゃあお味噌汁なんかもある?」
「ふふ。あるよ」
「えー?」
「ユニスはお味噌汁好きだよね」
「はい」
ユニスがにこっとした。
何だか不思議である。
こちらの世界の食文化はどうなっているのだろうと思ったが、そんなことに興味を持ち始めてしまうと大変なことになる気がしたので、やめておくことにした。
「もっとかしこまった部屋で、宮廷料理らしい料理が出てくるのかと思った」
四季が言うと、イレーネは困ったように答えた。
「宮廷お抱えの料理人たちは自慢の腕を振るいたいからそうしたいらしいんだけど、ユニスが少食な上、こういう食事の方が食べやすいって言うものだから」
「でも週に一度はきちんとした晩餐会を持っていますよ」
ユニスはそのあたりをつつかれると痛いのか、そうつけ加えた。
四季にはユニスの気持ちはわかる。毎日窮屈な思いで食事の席についていたら疲れてしまうのだろう。
ユニスとイレーネと四季がついているテーブルは、3人がかけてちょうどいい大きさの円卓で、話もしやすかった。

