「──…っ」

 ドサッと自室の部屋に転がり、尾形晴は大きく息を吸った。

 チョコレート人形の『揺葉忍』のインプットも出来たため、ゲートをつくる能力の行使が可能になっていた。

 人が騒ぎ始めて、パトカーの音が聴こえてきたため、その能力を使って自宅まで飛んだのである。

 しかし、本来『自分の能力ではないもの』を行使する時は、やはり身体に負担は来る。

 全身が重い。酷い脱力感が支配していて、晴はしばらく動けなかった。

 半時間ほど目を閉じていて、やがてクスクスと笑いがこぼれた。

「あーすんごい面白かったー。ちょっと快感」

 ごろりと仰向けになり、パソコンに目をやった。

「さて、世の中はどうなっているのかなー」

 のろりと起き上がってマウスを取りアイコンをクリックする。

 フェロウ曰く『念の吹き溜まり』である、先刻いた場所が映し出された。

 ニュースなんかではない。これも晴が仕掛けてパソコンで見られるようにして置いたのである。

 念を張った場所は1ヶ所ではなく、幾つか目をつけておいたスポットがあり、ずっと見られるようにしている場所もあれば、ある一定時間だけ見られるようにしている場所もある。

 晴はパソコンの画面の向こうの混乱具合を、満足げに鑑賞した。

「概ね、僕の筋書き通りだね。チョコレート人形がいたのは予想外だったけど。あんなものがいるなんて、事実は小説より奇なりってことなのかな?それとも僕も誰かの夢の中ってやつなのかな。まあ誰の夢でも現実でも僕には関係ないけどね。僕が僕として思うことに、そいつの夢やら思惑やらは関係ないんだし。そもそも夢と現実とどちらがより奇妙かなんて考える方がバカバカしい話だよね──どだい、奇妙な存在の人間が関わらないものが奇妙ではないことなんてないんじゃない?」