何処に向かっているのか、途方もなく大きな穴に落ちて行くような感覚だった。

 それぞれに繋いだ手が、ひとりではない安心感を感じさせた。

 由貴は涼の手を、涼は忍の手を、忍はフェロウの手を、フェロウの手はチョコレート人形の忍の手を。

 やがて、由貴たちは『次元の向こうがわ』に投げ出された。



 ドサッ。



「──っ」

 意識、は失っていなかったと思う。由貴は着地する衝撃を感じ、すぐ身を起こした。

「涼、大丈夫?」

 繋いでいる涼の華奢な手。涼は由貴の声に目を開けた。

「うん。…忍ちゃんは?みんないる?」

 涼の声に忍とチョコレート人形とフェロウが反応した。

「大丈夫」

「ぼくも大丈夫」

「とりあえずみんな無事だな。くそ…事前にあの場所、自分に有利に事が運ぶように仕組んでたんだな、あいつ」

 フェロウが頭をかいた。由貴が怪訝そうに訊ねる。

「仕組むって?」

「あの一帯を、念の吹き溜まりにしていたってことさ。そうでなきゃ、俺ら全員まとめて異次元に飛ばすなんて離れ業、出来ないね。まあ、それだけのでかい業を使ったらしばらく体力消耗しきって動けないだろうし、その間に俺らは対策を練るとしよう」

 忍は俯いたまま、先に晴に消されてしまった四季のことを考えていた。

 さっき、フェロウの言った言葉も胸に刺さっていた。

「四季は何処に行ったんだろう」

 もし、四季が別の時空に飛ばされてしまっているとしたら、二度と会えないんだろうか。

 ほろ、と涙がこぼれてきた。

 涼が「忍ちゃん」と忍の手を握る。

 由貴にもフェロウにもかけられる言葉が見つけられなかった。

 チョコレート人形の忍が、忍の顔をじっと見た。

「四季は、大丈夫」

 忍は顔をあげた。

「──本当?」

「さっきまで『尾形晴』は四季の姿だった。それは四季が傷ひとつなく無事だということ。本体が傷つくと『尾形晴』の四季の姿も傷ついているはず。だから大丈夫」