「一長一短のある力なのです」

 シェネアムーンは言った。

「あるがままに、というのであれば、それが道理でもあるのでしょう。けれども心の何処かで『これは違うのではないか』と思う人がいるのも事実。私は由貴さんの件に関しては『人として許される領域を超えた力が働き過ぎている』と感じました。時空管理人として由貴さんの世界とこちらの世界を訪れたのはそのためです」

 話をひととおり聴いて、四季は自分の置かれている状況を把握する。

「シェネアムーン」

「はい」

「僕はここに来る時『尾形晴』という同級生の身体を通ってきた。彼の身体がゲートにでもなっているような感じだった。吸い込まれた。彼は今まで僕とも由貴とも話をしたことはほとんどないし、控えめで礼儀正しい子という印象だった。でも──ついさっき会って話した時の『尾形晴』は、だいぶ様子が違っていた。饒舌だったし。あれが本当の『尾形晴』なのか、僕にはちょっと信じ難いんだけど。こういうことってよくあるの?いきなり別人になるようなことって」

 シェネアムーンは肯定も否定もせず「あり得ることではあります」と答えた。

「憶測での論議は無為に時を過ごしてしまうことに似ています。『尾形晴』ですね。調べてみましょう」

「それと、僕が元の世界に帰れる方法はあるの?」

 ユニスとイレーネは困惑した表情になった。

「残念ながら、私たちにはわかりません。由貴さんの意図する理由において『在る』存在ですから、手をお貸しすることは出来るでしょうが」

「…そう」

「由貴という人が、あなたを向こうの世界に戻れるような筋立てを作ってくれると戻れるかもしれないけど」

 シェネアムーンは四季を見ると告げた。

「次元を移動する技は時空管理人と条件を持った特定の者にしか許されていないのです。私が連れてはいけないことをお許しを。あなたが次元を移動する条件を揃えて参ります」

「僕に出来ることはないの?」

 四季がやりきれない気分で言うと、シェネアムーンは笑った。

「この世界を描くことの出来るあなたには、出来ることならたくさんあると思います。あなた自身が条件をつくることも」



     *