不思議電波塔




 しばしして、四季が気づいた。

「月光ソナタが流れ始めてから、かすかに鳴ってる逆行のワルトシュタインのテンポがゆっくりになってる。これも月光ソナタが流れている仕掛けか何かかな?」

「そうね。由貴、階段が崩れていたらどのみち先へ進めないのよね?絵があったところまで戻れないかしら?四季をピアノの部屋にワープさせたいの」

 四季の隣りで忍が話しかけた。

『うん。いいけど…。俺がいるとワープ出来るの?』

「そうだと思う。正確に言えば、人がその付近にいるとたぶん仕掛けが作動して『ピアノの部屋が描かれた絵』が現れるようになっているんだわ。さっきちらっと見た時は、由貴たちの行った階段の6階あたりの方の絵に『ピアノの部屋が描かれた絵』があったのよ。でも今は階段しかないの」

『わかった。ちょっと待ってて』

 由貴は急いで階段を駆け降りる。速い。

 幾らも立たないうちに絵を見かけたあたりまで来る。

 四季と忍は例の絵を見守っていたが、『ピアノの部屋の絵』が現れたことに歓声をあげる。

 ピアノの絵の中では、涼がピアノを弾いていた。

 由貴の方は、さっきの絵とは反対側の壁にもうひとつの絵が現れていることに気づき、その絵の中の四季と忍に声を放った。

『四季、忍、このピアノの絵のこと?』

「そう。とりあえず、四季、行って」

 忍に言われ、四季は由貴とピアノの部屋がある絵に手をふれた。

 すっと四季の身体が絵を通り抜ける。

 四季は絵の向こうで忍に手を振った。

『忍、正解』

 四季の笑顔に忍もつられて笑顔になる。

「早く行って。四季のピアノで軽く建て直しちゃって」

『うん』

 四季は由貴の肩をぽんと叩き、ピアノの部屋が描かれた絵を通り抜け、行ってしまった。