不思議電波塔




 反対側の絵も見てみると、恋人の像から始まり、1階の左右に伸びる階段の絵までは同じだった。

 その先は階段の絵が4つ続いていて、フロアらしき絵は見当たらなかった。

 これは由貴と涼の行った階段の方だろうか?

 こちらの絵には階段に窓があり、窓からは春、夏、秋、冬の景色が窺えた。

 冬の次の絵を見ると──絵の中に絵が描かれていた。

 絵の中の絵にはピアノが描かれている。

「どういうこと…?」

 ふと「忍?」と声がした。

 階下の方からではない。この部屋からだ。

 忍は後ろを振り返る。また声がした。

『忍?僕。そこ何処?急に壁に絵が現れたから、見てたんだけど、絵の中に忍がいて、動いているから』

 3階に座って休んでいる四季の絵が話しかけていた。

 忍はその絵まで歩いて行き、答えを返す。

「四季?私、5階まで来ているの。ここ、絵がいっぱいあるんだけど、何か仕掛けがありそう」

『そう。僕が見ている絵にも何か仕掛けがあるのかな?』

「うん。四季、動ける?ちょっと調べてみて」

『わかった』

 四季は歩み寄って来た。絵に手をふれてみる。

 すると、四季の身体は絵に吸い込まれ、5階にいる忍のところにワープした。

「え?し、四季?」

 絵から抜け出てきた四季に、忍は驚く。四季の方も驚いたように言った。

「そういう仕掛けなんだ…。絵が現れたのは忍がこの階まで歩いてきたからなのかな?」

「そうかもしれないわ。5階の絵は鏡になっているから」

「良かった。歩いて登るのきつかったから。ありがとう、忍」

 四季はほっと息をつく。

 部屋の様子を見て、忍の言っていることを理解した。

「この部屋がこの塔の全階を映しているんだね」