不思議電波塔




「弱く見えるものに価値?は。わからないね」

『由貴をずっと見ていてもわからなかったんだ?まあいいけど。由貴、桜沢さんが海で気分悪くなった時、桜沢さんのために立ち止まってしまったよね。由貴を立ち止まらせる力が、桜沢さんにあったってことだ。桜沢さんの何かが由貴の心を掴んでいたんだよ。君みたいな価値観の人間は桜沢さんのような子は弱いものとして切り捨てていくだけでしかないんだろうけど、君には出来なかったことが桜沢さんには出来た。君では由貴の心を掴むことは出来なくても、桜沢さんには出来るんだよ。そういうこと。その時点で、もう君と桜沢さんの価値の差がはっきりしてしまってる』

 寄生していた方は、そう言われてしばし言葉を失った。

 尾形晴の語ったことは的を射ていた。

 海の上にうずくまってしまった桜沢涼を見て本当にそういう発想しか出来なかったからだ。

 足手まとい。こいつはダメだ。

 それを気にかける由貴を見てもバカなんじゃないだろうかと思ったのだ。

 つまらん女を好きになってわざわざ苦労をするなんて。

 だが、尾形晴の言うように、由貴の世界が「強い」「弱い」というのとはまったく違う論理で回っているのだとしたら──弱肉強食の論理一辺倒でバカにする方の考え方が論点がズレているだけで、バカなんじゃないだろうかという話になるのだ。

『君の言うように、本当に人間の世界が弱肉強食なら、他人を喰いたがる者からジャングルにでもサバンナにでも行ったらいい話だよ。自分たちにだけ利になる論理を恥ずかしげもなく振りかざしてそれが当たり前なんて、どうかしてる』