──警報が鳴り続けていた。
シナリオに狂いが生じると、設定した警報が鳴る仕組みになっている。
尾形晴はパソコンのその警報をBGM代わりに、眠っていたが、綾川四季の語る言葉に目を開けた。
「…それが答えか」
由貴の答えなのか四季の答えなのか、どちらでもあるのかはわからなかったが、そこにある人に対する信頼のようなものが、晴は気に喰わなかった。
攻撃されても人を信じられるなんてバカじゃないだろうか。晴には由貴たちの言っていることが酔狂に近いもののようにも思えた。
人の心ほどあやふやでアテにならないものはない。晴はそう思っている。
由貴もバカではないからそれは知っているはずだろう。
それで、考え抜いて出てくるのがその言葉なのか?
「……」
晴は、ひどく冷めた心持ちの自分に気づき、自分は由貴にどう反応して欲しかったのだろうと思った。
由貴の丁寧に書いた小説をめちゃくちゃにして、由貴の傷つく顔とその先が見たかったのか?
めちゃくちゃな由貴を見られたら楽しかっただろうか?
楽しかったと仮定して、その先は?
もし由貴がまったく自分に興味を持ってくれないのなら、虚しく、同じことの繰り返しであるだけのような気がした。
傷つけられて快感を感じるような性癖の人間でもなければ、普通は傷つけてくるだけの存在には馴染まないだろう。
由貴の心の広さを試したかったのか、甘えたかったのか、こんな人間もいるんだと刻みつけてやりたかったのか、反論してきて欲しかったのか、共感して欲しかったのか。
由貴の反応は晴が望んでいた漠然としていた希望からは全部外れているようにも、また全部が受け止められているようにも思えた。
(つまらないな)
由貴は由貴なのだ。由貴をつまらないとしか思えない自分がつまらない。
満たしてよ。
こんな満たされない世界、満足しろと偉い人に言われたって、無理だろう。
何で無理なことを要求する人間がいるんだか晴にはわからない。
(嘘つくのが苦にならない人間は楽でいいよな──)
晴はぼんやりと思った。

