不思議電波塔




 即興曲のようにジャスティが物語を語り出すのを見て、周りの人間は驚く。

 語り終えたジャスティはふふっと笑った。

「雨が川になって海になって雲になって──そういうことを考えていると、木には木の物語、花には花の物語があるんだと思う。世界には二度と同じ姿では戻って来ないのもあるけど、色鉛筆になった木と、女の子のように、また新しい形で出会えることもある。カウフェリン・フェネスも、また新しい形に生まれ変われるといいと思う」

 その時、ヒィン、とジャスティの身体が輝いた。

 四季の身体も同じように輝く。

「やっぱり君は由貴の意志を受け継ぐ者なんだね。物語を語る力が君にはある。ジャスティに創造の力が使えますように。これは由貴の意志。行こう、ジャスティ。ハロンに。僕は、君が親友のカイを守りたいと思うように、僕も由貴を守りたい」

 涼が希望を紡ぐように言った。

「ジャスティとイレーネがハロンの地を生まれ変わらせることが出来ますように」

 忍の言葉が続いた。

「この物語が新しい世界へ踏み出すゲートとなりますように」

 アレクメスのフィノとルナは「あちらの世界」から来た綾川四季・桜沢涼・揺葉忍の影響力を目にするのは初めてだ。

「創造の力だなんて…。そんなことが出来るの?本当に世界だってつくり変えてしまえるわ」

「それは僕たちがここにいる間は作用する力です。僕たちは『あちらの世界』に戻らなければならない。僕たちの身体がカウフェリン・フェネスにあることが、『こちら』と『あちら』の歪みでもあるから」

 四季は答えた。

 無限に作用する力などありはしない。物語に始まりがあり、終わりがあるように、力にもその時にしかないものだからこそ価値があるのだ。

 すべてに規律がない世界というのは、すべてに規律がある世界と同じくらいに窮屈で意味のない世界だろう。

 命は生まれ、その魂が生をまっとうするまで、ひとつの身体にとどまりつづける真理は、誰にも解き明かすことの出来ない神秘が隠されている。

 他者が唯一であることを侵害せず、他者に手を差しのべられる者は幸いなり。