大人にはないもの──。
真新しいノートだ、と四季はジャスティを見ていて思った。
由貴はいつも誰かのために時間や労力を捧げているような感があって、自分の心は置き去りになっているようだった。
頭は回るのに、何処か思考が純粋なまま、擦れていないのはそのせいだろう。
もしジャスティがこの先のカウフェリン・フェネスを背負って行くというのなら、ジャスティの物語にしてあげたい。
無垢な心が、このような世界の有り様を前にして、何を選びとり、つくってゆくのか。
それを見てみたい。
「カウフェリン・フェネスの綻びは、最初、綾川由貴の感じ取った世界の綻びを描き出したものだった。この世界の物語は、綾川由貴の意図によって暴走することなく守られていた。でも、その物語に、いたずらに由貴の意図しないものを紛れ込ませる者がいる。カウフェリン・フェネスがこれほどまでに混乱しているのは、そのため」
「……」
「そう言われてもよくわからない?」
「はい」
「ジャスティはお話書いたことある?」
「お話ですか?…考えることはあるけど」
「たとえばどんな?」
「うーん…。木が女の子に恋をする話」
「は?木?恋?」
これにはカイも驚いたのか、ジャスティを見てぽかんとする。
ジャスティはふわりと笑顔になると話した。

