その話を聞いてなおさら、この場にフォーヌの人間がいることがカイには不可解なことのように思えた。
──が、少なくともこの場にいる王家の者たちは、ルナのことを敵のように見ている雰囲気はなかった。
ノールが言った。
「フォーヌは土地が肥沃ではありません。ですから、フォーヌの王は少しずつ領土を拡大することによって国の存続を図ってきた歴史を持ちます。しかし、それで潤うのはフォーヌの一部の政を取り仕切っている者たちだけのことで、フォーヌの民は永い圧政に耐え兼ね、国の存続よりも国外へと生き延びる道を考える者は多いと聞かされました。大戦が起こるまでは、その情報も国外へ漏れぬよう国が民に圧力をかけていたようですが、最近になってようやく、ルナのように命懸けで国外への脱出を図り、異国の国籍を取る者も出てきたのです」
リュールはルナがフォーヌから逃れてきた当時のことを話した。
「ルナが何も持たずに身ひとつでリオピアに逃げようとしているのを見た時は、俺はこれがフォーヌの現実なのかと思った。過去の大戦を知っていて、それでもリオピアに逃げようと考えるというのは、よほどの覚悟がなければ出来ることじゃない」
リオピアは黒髪の民だ。
ルナのような金髪碧眼の者がリオピアの者に紛れようと思って紛れられるものでもない。
大戦後のリオピアの中にフォーヌの人間だとわかるような容姿の者が入って行くようなことは、危険の方がはるかに大きかった。
「俺はルナに、リオピアではなくアレクメスへ逃げるように言った。こんな容姿の人間が国境を越えた途端、殺されないとも限らないからな。アレクメスの神学校にはユニスがいるし、ユニスならフィノにも顔が利く。リオピアに助けを求めるなら、ユニス本人に直接会わせた方がいいと思ったんだが、それは正解だった。ルナはフォーヌの軍の連中の企んでいることを知らせてくれたから、事が大きくなる前に押さえることが出来たんだ」

