不思議電波塔




 イレーネは傍らにいるユニスを見る。

 綻びが始まって以降のハロン国の情報の少なさに、それがカウフェリン・フェネス全体に関わることなのではないかと懸念を抱き、調べたのがユニスなのである。

 アミステイル王家に生まれた王子と王女の名がジャスティとイレーネだということはわかっていたのだが、どのような背景があって王子と王女が生まれ、どういう経緯で消息不明になったのかを調べるのは困難を極めた。

 それでイレーネ・スフィルウィングがハロン国の王女の名と同じでもあるため、何かあるのではないかとユニスは見ていたのだが、イレーネがその王女本人であると立証するには時間がかかったのである。

「私もつい最近知ったばかりだから。私よりも当時のことを理解しているユニスの方が説明は出来ると思う。ユニス、お願いしていい?」

 ユニスは「はい」と答えると、静かに話し始めた。

「ネムフェリウにある小さな島が『青龍の森』と呼ばれ、その中央にある泉が『青龍の目』と呼ばれていることは、ご存じの通りです。『青龍の目』は綻びの始まりを憂い、混乱にあるハロンから、生まれてまもない王子の命を護ることにしました。理由は王子の意志に関係なく、王子の生まれ持った力のみを利用し、世界を動かそうとする者たちが政の実権を握っていたからです。ハロンの幻獣というのは、実際には実体がなく、力あるものの命を喰らい、力を溜め込む、巨大なエネルギー源のようなものです。力あるものとは、若者や魔力に秀でた者、幼子のことで、力を吸い上げられた者は老人のように干からびて、そう長くはないうちに死に至ります。幻獣に人を拐わせて力を吸わせていたのは、ハロンの政の実権を握っていた者で、彼らは蓄えたエネルギー源を利用し、世界を手中におさめることを考えていました。ハロンのアミステイル王家は、政とは関わりを持ちません。幻獣が目覚めるというような時勢の時に、力ある王子が生まれ、政に関わっていた者は『このような時に、聖なる力の強い者が生まれるとは』という焦燥感を覚えたのでしょう、彼らは王妃から王子を取り上げようとしました。王子がそのまま成長し、力を持つようになってしまえば、自分たちのしていることが公になってしまう。力ある者は生まれた時にわかるものなのです」