「カイ、心配してくれてありがとう。カイの言うこと、僕にはよくわかる。たとえば人の気に障ることはしてはいけないという気持ちは僕の中にもある。でもその『気に障ること』は人によって違うから、たとえ万人が気遣いの気持ちを持っていたとしても、気に障らないことが他人に対してひとつもなくなる人間なんて、それでもひどく稀な存在なんだよね。そういう人はそういう感覚がないのか、いろいろあって人間がまるくなってしまったのかのどちらかで。でもそのどちらかをみんなで目指しましょうとするのも、また反発が起きたりする。あるがままでいいじゃないかとか、そのままにしておけばいいじゃないかとか。だけど、何でもうやむやのままにしておくと、それはそれで大きな問題になってくる。片づけるのなら何を何処に片づけるのか、はっきりした方がいいんだよね。その小さな意識が大きな問題を小さくすることに繋がると思う。だって綻びというのは、初めは小さいから。最初から大きな綻びなんてないんだし」
リュールがジャスティに少し興味を持ったようだった。
「こんな子供にカウフェリン・フェネスの命運なんか預けて、どんな無邪気な話が展開されるかと思ったら、意外とまともなことは言うんだな」
「意外とは失礼じゃないのか?リュールも大人という年齢ではないだろう」
イレーネがたしなめる。リュールは冷めたように言った。
「本気で何も知らない子供がカウフェリン・フェネスの命運を決めるなんて、甚だバカバカしい話だからな。ああ、そういえばお前の兄だとか言ってたな。まあ顔立ちと髪の色は似ているが」
フィノがイレーネに尋ねた。
「イレーネ。ジャスティのこととあなたのことについて話してもらえないかしら?時が来たら話すとあなたは言っていたけれど、それは今ではいけないの?」

