「健也様、お帰りなさいませ。」
執事の風祭が車のドアを開ける。
俺は風祭に鞄を預けて
車に乗り込んだ。
いや、上半身だけ乗り込んだが─...
「健也様っ!?」
夢中で俺は車から飛び降りた。
玄関から出てきたばかりの鈴木ちゃんに
俺は駆け寄る。
「えっ.....?」
俺が鈴木ちゃんの目の前まで行くと
周りの視線が急に集まった。
鈴木ちゃんは驚いたように
大きな目をもっと見開いて俺を見ている。
「...これから一緒に遊ばね?」
「...愛梨。」
隣から少し高い声が聞こえる。
だけど鈴木ちゃんの隣にいる子を
見ないで鈴木ちゃんを見つめた。
「...悪いけど友達と帰るんで!
あとこういうの迷惑ですっ!
やめてくださいっ!」
怒鳴るようにいった鈴木ちゃんの声に
少し胸が痛くなった。
こんな断り方を聞いたのは
初めてかもしれねえ。
そのとたん俺の心に
火がついたような気がした。
「だったら友達になってくんね?」
急に周りがしんとした。
何を言ったのか自分でも分からなかった。
何も考えないで言ったから。
「とっ友達?」
鈴木ちゃんは呆れたように俺を
見て聞きなおした。
「うん、友達。それならだめ?」
しばらく鈴木ちゃんは考えるフリを
した。
「...いい、よ?友達なら。」
「愛梨っ!?」
隣から驚いた声が聞こえた。
でもそんなの全く耳に入らない。

