「拓斗先輩…」
携帯を握る力を更に強める俺に声がかかった。
ふっと、力を緩めて俺は顔を上げた。
誰かと…話す雰囲気でもないんだけど。
そう、思いながら顔を上げた視線の先には菜々美がいた。
今にも泣きそうな顔で俺を見下ろす菜々美。
ちょっと…今は放っといて欲しいんだけどな…。
「…菜々美」
「大丈夫ですか?」
…今にも泣き出しそうな顔をしてるくせに俺の心配なんか、しなくていいよ。
だから、俺は無理に笑顔を作って。
「え?だいじょーぶだいじょーぶ、菜々美こそ平気?」
って、声をかけた。
我ながら嘘くさいと思う。
だけど、菜々美はそんな俺の顔を見て眉を下げて。
視線を泳がせてから、俺をまた真っ直ぐに見据えた。



