花蓮【完結】

教室の扉を開けると、ざわざわしてた室内が一瞬にして静まる。

少しの間をおいた後、またざわざわし始めた。


あたしと佐緒里が椅子に座ると、そこに中学から知り合いの拓斗があたしと佐緒里に近付いた。

拓斗も総神メンバーだ。


「麻美ー佐緒里ー」


「あ、拓斗」


「たっくん」



佐緒里は拓斗をたっくんと呼ぶ。

パンチパーマのこの男をたっくんと呼ぶか。
似合わないぞ。



「今日暇?」


「あー今日あたし達朱美んとこ行くわ」


「まじかー…その後ならいい?」


「別に平気だけど何?」


拓斗はバツが悪そうに言った。


「いやさーツレが麻美のことまじ気に入っちゃって。
会ってくんない?」


「あーーーー、それは、うん」


悩むあたしに佐緒里が口を挟む。


「麻美、会ってあげればー?」


佐緒里がそう言うが、でも。


「あーごめん、めんどくさい」


「そんなこと言ってるから彼氏出来ないんだぞー」


「いや、いらないし、花蓮の皆があたしの恋人だから」


「あーあーあーあーあ。
気持ち悪い気持ち悪い。
私には信司いるから、それ却下ね。
まあ、あんたのファンなら泣いて喜ぶだろうよ」


「ふはっ、麻美のファンとかいるのか」


佐緒里が言った言葉に拓斗が吹き出した。


いつの間にか、あたしと佐緒里の机のまん前に来て前の椅子に座っている。


遠くからその椅子の持ち主が見てますよー。

まあ、言えるわけないか。