そんな事を考えていたら、チャイムが鳴った。



チャイムが鳴ると生徒は一斉に着席し、少し遅れて担任の平原先生が入ってきた。





平原 惇(ヒラハラ シュン)先生はまだ二十六歳の若い先生だけど、初々しいオーラがほとんど無い。




別に、歳のわりに老けているとかそういうのではなくて、ただ単純にしっかりしているということだ。



精神年齢が高そうというか、まだ二十六歳なのに様々な経験をしてきた人のように感じる。


この春、沖縄からやってきた。




ぼくらに比べ、肌が日焼けしている。




冷たそうで怖い顔立ちだが、意外に動物好きで生徒思い。


少々ミステリアスなところも良いと思う。


かしこまった場所以外では常にTシャツとジーンズで、変に着飾っていない。


感情をあまり表に出さない人で、いつも冷静沈着なところがカッコいい。



そのせいか、女子から壮絶な人気を得ている。






「………今日は、机を見てみんなわかっているように、転校生が一人いる」





先生は特に感情のこもらない声で淡々と話し始めた。





「沖縄の中学校から来たんだが………うん……まぁ説明は見ればわかるか…」





ぼくは平原先生の言い方が気になった。




なんとも浮かないような、少し後ろめたいような…………





「黒木ー、入ってきていいぞ」



ぼくも入れて二年A組三十八人、全員が転校生が入ってくるであろう教室のドアを凝視した。