いつもの泉に近づくと、うっすらと人影が見えた。
寝癖の付いた頭にマフラー、これだけで誰だか分かる。
『アンリ!』
「ユイ、おはよう」
アンリはマフラーに顔を埋めて立っていた。
座ればいいのに、と思ったけど、地面が濡れているのを思い出す。
『ごめん、遅かった?』
「ううん、全然。僕もついさっき来たし」
アンリは言いながら足下に置いてあった青色のリュックを背負った。
新品、とは言えないけど古くもない。
なかなか使われているようだ。
「来て早速だけど、行こっか」
『・・・うん』
「・・・やっぱり止める?」
アンリは私の顔を伺うようにして、提案した。
行きたくないわけじゃない。
でも、何かが私を引き止める。
『止めないよ!もう決めたもん』
私はその’何か’を振り払って、村の出口に歩いた。