『え、スイレン・・・?』


スイレンは当たり前のように上から私を見下ろしていた。


空が暗いから、スイレンの透明な身体も灰色に映ってる。


なんで、浮いてるの・・・?


錯覚?夢?見間違い?妄想?幻覚?




スイレンに羽はない。


ドラゴン科かもしれないけど、羽のない生き物は飛べない。


なのになんで?


驚いている私の考えていることがわかったのか、スイレンは


<わたくしは、言わば水の化身ですわ。雨の日はわたくしにとって最も特別な日で、まわりが雨という水に包まれているので空を飛べる事ができますの>


だから雨は大好きなんですの、と付け足して、教えてくれた。


『どういうこと?』


<周りが水ですので、浮かぶことができるのですわ>


私に解りやすく大切なとこだけ省略して言う。


・・・なるほど。


『つまり、スイレンが水の中にいるのと同じ?』


<えぇ、そうですわ>


スイレンは私に雨がかからない程度に、本の中でしか見たことのない人魚のようなしっぽを揺らしながら、楽しそうに頭の上をくるくる回った。