「・・・そうすれば、誰も悲しまないと思ってた。ううん、悲しむ人なんて『やだ!!!』」


私はアンリの言葉を大声で遮った。


胸元にしがみついてやだ、やだ、と繰り返す。


「・・・ごめん」


『やだ、やだ、いかないで。おいていかないで・・・』


ほろりと涙が流れた。


ぽたぽたと雫が床に落ち、しみを作る。


「僕にとって、絵は命と同じくらい大切なんだ。
だから・・・」


アンリは私の肩を掴んでそっと離した。


「知りたい。世界を、色を、感情を。
僕には欠けてるらしいんだ」


『知らなくていい。ここにいてよ』


私はぎゅっとアンリの服の裾を握った。


手を離したらどこかに行ってしまいそうな気がしたから。


「ユイ、僕にはこれしかないんだよ」


『そんなことない』


「そんなことある」


ほら、また悲しそうな顔。


ほんとは嫌なんでしょ?


ねぇ、いかないで。