『か、かわいいね』
「・・・ありがと」
私が頑張って会話を続けさせようとしても、アンリは一言で終わらせてしまう。
気まずくて黙っているとマグカップを机に置いたアンリが「あのさ、」と口を開いた。
「僕の先生がね、色々・・・外の世界を見て来いって言われたんだ。
僕は引きこもりすぎて周りを見なさすぎだって。
だから満足に絵が描けないんだって・・・」
ぽつり、ぽつりとアンリは小さな声で言葉を零した。
膝の上で組んだ手を見つめながら、目を伏せて。
私はアンリが何を言いたいのか解らなかった。
ただ困惑しながら話を聞く。
「僕が外に出ないと先生は多分認めてくれない。
だから、旅に出ようと思う。
それで、いっぱい絵を書いてくるんだ」
アンリはまっすぐな目を向けて、私にそう言い放った。