「ユイは、今日何を習ってきたの?」


『えっとね、水の魔法だったかな』


低級用教科書の初めの方に載っていた「水の魔法」。


Cクラスにとってはまだまだ難しいけど、今日は珍しく、というか初めてミラクルが起きた。


なんと、一発で魔法をかけた水に変化が起きたのだ。


しかしながら、そんなことを知らないアンリは小首を傾げて私に聞いた。


「出来た?」


『うん。今日は一回で出来たんだよ!』


普段は一発でなんて発動すら出来なかったのに、今日は水を浮かび上がらせることまで出来た。


クラスメイトやメルローズ先生がビックリしていたのを覚えてる。


まったく、失礼しちゃうよね。


私だっていつも失敗ばかりじゃないんだから。





「ユイ、見せて?」


『うんっいいよ』


アンリの表情こそ変わらないけど、目は一段ときらきらしていた。


出来るだけ期待に応えるようにと、意識を神経に向ける。




目を閉じ、心を静めて集中する。


ーー水竜よ、我に応えよ。すべてを洗い流せ。


手を前に突き出して、呪文を唱えると、泉からぶくぶくと泡が出てきた。






・・・あれ?授業で習ったときはこうはならなかったんだけどな・・・。


確か教科書には水を自由自在に操れるって書いてあって・・・。


泡は徐々に大きい空砲になっていく。


「・・・」


『・・・』


「これで、あってる?」


『・・・う、ん』


ごくりと息をのんで何が出てくるのかを待つ。




すると水がいきなりバシャッと音をたてて吹き出し、何かの形に変形した水が飛び出した。