キス逃げ【短編】


まだ居るかな?

不安な気持ちばかりが募る。

一気に階段を駆け上がり、緊張しながらドアを開けた。


―――バンッ


そこで見たものは、後輩と衛のキス逃げ現場だった。


―――チュッ


軽くキスをした後輩の女の子は、キャーキャー言いながら側で待っていた仲間達と共に、私の脇をすり抜けてダッシュで階段を降りて行った。


もう、ついて行けない……


私はその場にへたり込んでしまった。

俯いた私の頬から落ちる滴が、乾いたアスファルトを少しずつ濡らしていく。


―――ガサッ


俯いた視界に入ってくる、二足の上履き。


「紗柚」


聞き慣れた声。

その声の主は、私の頭を撫でてきた。