次の日。


休み時間に、親友の美依《みい》と廊下でしゃべっていた。

すると、ダダダダダと後ろから音がしたかと思うと

「紗柚先輩!!」

と、大声が聞こえた。
驚いて振り返ると



――――チュッ



やられた!!!


なんと、私が【キス逃げ】のターゲットになってしまったのだ。

しかも、大声出すもんだから超注目の的じゃん。
気が付いた時には、男の子は逃げていってしまっていた。


「ヒュー紗柚。モテるぅ~~」

美依の声でハッと我に返った。

周りからは、美依と同じくはやし立てる声がした。


やだっ……


私は周りを見渡した。



うわっ、最悪。



衛が私から目を逸らし、教室の中に入っていく姿が見えた。
自分の教室の目の前だったのが、本当に最悪だったんだと思う。

私はすぐに衛を追いかけた。

衛は自分の席に座って、男子と話していた。

「衛」

「なに?」

明らかに機嫌が悪そうに返事をした。


しかも、私のほうを向かずに……


「ちょっと良い?」

「忙しいから無理」


いっ…忙しいって…

男子と話してるだけじゃん。


周りの男子も、何だか察したらしく衛に『行けよ』と合図を送る。
それでも、衛は頑なに私の誘いを拒んだ。


衛のこんな姿を見るのは、初めてかもしれない。


私は、泣きそうになりながら衛の元を離れていった。