キス逃げ【短編】


えっ……



そう思っているうちに、私の唇に衛の唇が重なり合った。



さっきより長くて


さっきより愛が有るキス。



唇を離した衛は

「自分からキスするの、初めてなんだからな」

少し赤くなりながら言う衛は、やっぱり可愛かった。


「衛、キス逃げされたら消毒してね」


「バ―カ、紗柚にキス逃げしたらぶん殴りに行くから」


そんな事を言ってくれる衛が嬉しくて、衛に抱きついた。


「紗柚こそ、俺にキス逃げする人から守ってくれるの?」


「もう、キス逃げさせないもん。だって、衛は私だけの衛だから」


衛の体に腕を回したまま、ギュッと頬を衛の胸にくっつけた。


「俺も、紗柚を離さないから」


衛の胸の中で頷きながら



『好き』



と、呟いた。

愛の無いゲームみたいなキスなんか、絶対にさせないんだから……

そう思い、顔を上げる。


視線がぶつかった私達は、もう一度キスをした。


唇を離した私は

「ねぇ、衛。21のアイス食べに行こう」

「そうだな」

顔を見合わせて微笑み合う2人。


優しい風が、私達を包み込んでいた。



   ――――おわり――――