キス逃げ【短編】


「もう……触らないでよ…!!!」

泣いた顔を見せたく無くて、俯いたまま首を振った。

強がりなんて言いたくないのに、私の口からは可愛くない言葉が出てくるんだ。


「おあいこだろ?」


そんな言葉にびっくりして、つい顔を上げてしまう。

衛は今まで見たことが無い、真剣な顔をしていたんだ。

「…違うもん……衛の方が…沢山キス…されてた」

負けじと出てくる強がり。

衛は私の手を握り締めると、グイッと引っ張り私を立ち上がらせた。


なっ…なに?!


そのまま私の手を引き、ゆっくりと歩き出す衛。

フェンスの方まで行くと、私から手を離し背中向きのまま話し始めたんだ。