「衛《まもる》先輩」


「ん?」


―――チュッ


「へ?!?!」


ポカンとする衛の元から、ダッシュで走り去る女の子。



何回こんな光景を見ただろう……


今のは


【キス逃げ】


最近の、うちの学校で流行ってる遊び。

スカート捲りやブラはずしと同じ類の遊びで、好きな人にキスをして逃げるって遊びなのだ。

そして、中学校から腐れ縁の衛はカッコイイのに、ボーっとしてるから格好の餌食になってしまったのだ。


「なにボーっとしてんのよ」

私は思いっきり衛の後頭部を引っ叩いた。



――――バシッ


「…ってぇ~~な、紗柚《さゆ》何すんだよ」

「高2にもなって、ボーっとしてるあんたが悪いんでしょ」


私はブツクサ言う衛を置いて、そのまま歩き出した。

「紗柚、帰るんなら一緒に帰ろうよ」


中学校の時からそう。
衛はいつだって私の後をくっついてきた。

そんな私は、いつしか衛の事を好きになっていたんだ。

でも、衛にとってはお姉さん的存在の私。

だから絶対に『好き』だなんて、口が裂けても言えないんだよね。


そんな関係で満足してたのに、こんな遊びが流行るなんて本当に運が悪いと思う。