天使の翼を持った鬼~愛よ輝け~

目を開けたら。


車はなかった。


人も、いなかった。


あるのは…緑。


「ここ…どこ?」


「天鬼!?無事でよかった~」


「翼鬼置いて逝くわけないでしょ」


置いて逝ったら、あたしも死ぬって分かってるから。


「それより…ここ、どこ?」


「…森?」


っぽい。


そうとしか、考えられない。


『翼鬼。とりあえず、どこか行きましょう』


愛が言う。


そうだな…。


人を探そう。


「天鬼、行こう」


「うん。…あ、翼鬼、手」


あたしは何も言わずに、手を差し出す。


その手を、天鬼はなんの迷いもなく握る。


「迷子になられると、困るから」


「…なんないよ」


多少呆れながらも、あたしはその手を離さなかった。