天使の翼を持った鬼~愛よ輝け~

「翼鬼…。もう大丈夫だから。そんなこと…言わないで」


天鬼は、困ったように笑う。


「分かってるよ」


笑って返したかったけど…笑えなかった。


あたしは、もともと天鬼と動物の前でしか笑えない。


天鬼以外の生きてる人間の前で笑ったことなんて、ない。


…きっと、もう笑えない。


そんなことばかり考えていたら。


天鬼があたしの前にきた。


あたしを振り返って言う。


「いい?翼鬼。僕らは双子だよ?いいたいことは、なんでも言って。翼鬼のことを解るのは、僕でしょ?」


そんな、当然のこと…。


「当たり前だ」


なら、よかったと、天鬼は歩きだした。


その時。


車が…出てきて…。


天鬼を、轢きかけた。


「天鬼!?」


あたしは天鬼に手を伸ばした。


愛と輝も、ついてくる。


まとめて轢かれる━そう、思ったのに。


衝撃は、いつまでたってもこなかった。