♠翼鬼♠

目を開けたら、真っ白な世界だった。


…戻ってきたんだ…。


「お帰りなさい。どうでした?混乱してしまいました?」


麗が笑顔で出迎えてくれる。


「混乱したよ…。どっちが本当なの?」


あんなに愛してくれてた両親。


とても冷たくした、肉親とは思えなかった両親。


あたしは、あたしたちは…どちらを信じればいいの?


「…両方とも、本当です。人間には多くの顔があります。憎しみに満ちた顔、愛情に満ちた顔。それはどちらも同じ人のものであって、時に応じて変化します」


どちらも、本当の顔…?


「特定の人にしか見せられない顔、表面だけの顔…。いろいろあるでしょう」


ある、のかもしれない。


あたしは顔を作ってのかな。


無意識のうちに、いくつも顔を使い分けてたのかな。


「あなたがたは無垢です。この世の汚れを知らなくていいほど知っているのは確かです。でも…心は、とても真っ白」


無垢…?


正直、どこが、と思わなくもない。


でも麗が言うから…なぜかすとんっと心に落ちる。


「この場所は、あなたがたの心を映す場所。だからこんなにも白いのですよ。黒が、全くない…」


これが、あたしたちの心…?


眩しいくらいに、白いと思った。


これが心の中だと言うの…?