幹部が全員出て行って、部屋の中は俺と天鬼だけになった。


天鬼は相変わらず眠れていない。


輝が慰めるように寄り添っているが…ほとんど反応を示さない。


虚ろな瞳で、ただ息をしているだけ。


…まるで、生きた人形だ。


「天鬼、話は聞いていたな?翼鬼は必ず助け出す。だから…お前は安心してろ」


翼鬼と言う名前にだけ、反応する。


微かに、頷いたように感じた。


「ほら、寝るぞ」


とは言いつつ、天鬼は寝ないからな…。


ただ布団に潜っているだけ。


俺は仕事があるから寝てないが…今日くらいは、寝るか。


「天鬼、俺も寝るから寝ろ」


「…土方さん…。僕は大丈夫だから…」


「いいから、寝ろ。ほら…」


女みてぇに細い腕を引っ張って、無理やり布団の中に入れる。


「…今日は、お前の父親にでもなってやるよ」


すると天鬼は驚いた顔をした。


だが、すぐに泣き笑いになって…


「…お父さん…」


瞳を閉じた。


「安心して寝ろ」


俺は天鬼が本当に眠るまで、頭をなでていた…。





久しぶりに、天鬼はぐっすり眠った。


新撰組のみんなと一緒に、笑いあっている翼鬼の夢を見た。


触れたら、消えてしまいそうな…儚い夢だった…。