天使の翼を持った鬼~愛よ輝け~

「…入るぞ」


そう声をかけて、土方さんと天鬼君が入ってきた。


「どうしました?」


尋ねてはみるものの、用件なんてとっくに分かってる。


天鬼君は何も感情がないように、ぼーっとしていた。


散々泣きはらしたのか、目が赤く、くまがある。


…また眠れてないのか。


「…奴らの狙いは、本当にこいつらだけだと思うか?」


「いえ…。去り際、言っていたじゃないですか。新撰組を、潰すと」


きっと復讐のつもりなのだろう。


「…僕のせいだ…」


「天鬼。心当たりがあるからと言って、お前のせいじゃない」


心当たりが、ある…?


どういうこと?


「僕が…お千代ちゃんの婚約を破棄させたも同然なんだよ…」


天鬼君は何も映っていない瞳で、呟く。


なるほど、そういうことか…。


「お千代とかいう娘が嫁ぐはずだった家の奴ら…。そう考えていいだろう」


「それなら納得がいきますが…」


それじゃあ、天鬼君にとってあまりにも酷だ。


「天鬼のせいではない。相手の家の奴にも、許可はとってあったらしいんだ。好きな奴と結ばれたら、嫁ぐ話はなしだと」


だったら…別に天鬼君が自責する必要はない。


だけど、優しいから。


必要以上に、自分を責めてしまうんだろう。