♢総司♢

翼鬼が、さらわれた。


信じられなかったそれは、朝…俺に抱きついてくるものがないことで、ああ…現実なんだと。


実感してしまった。


…翼鬼が犠牲になると決めなければ、天鬼君が犠牲になってた。


それでいいかと聞かれれば…もちろん、よくない。


誰も犠牲になんてなっちゃいけない。


「翼鬼…」


だけど。


なんで、二人だったのだ。


なんで翼鬼だったんだ。


なんでまた…翼鬼が怯えていた悪夢を、始まらせたんだ。


翼鬼。


必ず、助け出す。


俺は翼鬼がいないと…もうだめになるんだよ。


翼鬼が側にいないと不安で不安で。


自分をうまく自制できなくなる。


そして何より…


翼鬼が今遭っているであろうことを想像するだけで……怖い。


また人を信じられなくなるかもしれない。


また一生の傷を負うかもしれない。


いや…きっと、負ってしまうんだ。


どうして、翼鬼たちが…また、苦しむ必要があるんだ…?