天使の翼を持った鬼~愛よ輝け~

「分かってて、言うのか」


「ああ…」


天鬼を助けられるのならば。


あたしが、代わりになろう。


「止めて、そんなこと!僕でいい、お姉ちゃんはそんなことやんなくていいからっ」


天鬼…。


「ねぇ、ほんとは相当怖いでしょ?俺がずーっとされてきたことを、されるんだよ?」


天鬼は、あたしがされてきたことを知っている。


だからこそ…恐怖はとても大きい。


「だからって…またお姉ちゃん犠牲にして、僕だけ助かるなんてしたくない!!」


「黙ってろ!お前ら、二人とも助けるさ…」


土方さん…ごめん。


きっとそれはムリだから。


「…お願い、します。天鬼の代わりに、俺を連れてってください…」


「翼鬼!あなたを失ったら、俺はどうすれば…」


総司の焦った声が聞こえる。


そっちを振り返るのが怖くて…心のなかで、ごめん、とだけ呟いた。


振り返ったら、決意が崩れてしまいそうな気がしたんだ。


「…交渉、成立だ」


天鬼を思いっきり放り投げて、あたしを掴む。


「やだっ…お姉ちゃん!!また僕を一人にするの!?またお姉ちゃんは独りを選ぶの!?」


…怖いよ?


またあの悪夢が始まるんだって思うと…すごく怖い。


だけど…


「天鬼を守れるなら、それでいい」


「っつ…」


あたしが最後に見たのは。


泣きそうな顔をした天鬼と。


ただ憎しみに満ちた顔で敵を見ている、みんなの姿だった…。