天使の翼を持った鬼~愛よ輝け~

あたしは天鬼と横で見ていることしかできなかった。


戦いは激しさを増してゆく。


幸い、一般人はいない。


それだけがせめてもの救いだった。


「…大丈夫かな…」


天鬼が不安そうに呟く。


「みんなのことだもん。大丈夫だよ」


誰よりも一番、あたしがそう、信じたかっただけなのかもしれない。


「僕のせいで…」


「天鬼のせいじゃない。身に覚えのないことを、謝る必要なんてないんだよ」


悪いことをしていないなら、していないと言えばいい。


天鬼がそう言うなら、あたしは絶対に信じる。


『…天鬼。あいつらに見覚えは?』


輝が、見上げて聞く。


「ない。知らない人ばっかり」


そりゃそうだよね。


なんで狙われてるのかも分かってないんだ。


剣の腕なんて、分からないけど…。


やっぱりけっこう腕の立つ人がいるのだろうか。


みんなが…簡単に決着をつけられない。


怪我は、誰もしていないと思う。


血の海になっている中に倒れているのは、すべて敵だったから。