ねぇ、だから分かって?


「好きなんだよ…。だから、お嫁になんて、行かないで…?僕を、好きになってよ…」


「…天鬼はんって、そんなに独占欲強かったんどすなぁ」


「悪い?男なんてそんなもんだよ」


好きな人には、笑顔でいてもらいたい。


好きな人には、自分を好きでいてもらいたい。


「…男ってさぁ、ワガママなんだよ」


「なら…その我が儘に、付き合ってあげます」


そう言ってお千代ちゃんは…ゆっくりと、優しく、僕の背中に腕を回した。


「素直じゃないね」


「…それでも、分かってくれてはるんでしょ?」


「当たり前。お千代ちゃんのことなら、分かってあげる」


「上から目線どすな」


クスクスと、二人で笑いあった。


すると…何故か僕の体を、淡い光が包んで。


あっという間に、傷が治った。


「天鬼はん!?傷が…治ってはる?」


なんで…治った?


治るのはまだ先のはず。


それに…さっき、聞こえた声は…。


「…帰ろっか」


考えないでおこう。


考えてしまったら、終わってしまう。


なんでか、そんな気がした。


それでも…あの、声は…


『天鬼』