「これでいいなら、なんでそんなに泣いてんの!?お千代ちゃんの本当の気持ちは…どこにあるの?」


お千代ちゃんは涙を拭きながら、笑う。


「私の気持ちなんて…どこにもあらへん。両親が私の幸せを願っとってくれてはるんどす。せやから…従うしか、ありまへん」


…嫌だ。


「…そんなの、嫌だ」


「天鬼はん…?」


「そんなの、お千代ちゃんらしくないよっ!」


もう、最後になるのなら。


悔いは残したくない。


「お千代ちゃんはいつも明るくて、優しくて!でも強がってる!自分の気持ちに素直になればいいんだよ!」


…どうしてかな。


僕が好きな女の子は…我慢ばっかりしてる気がする。


そんなとこ、似なくていいのに。


「…今のお千代ちゃんは、僕が好きになったお千代ちゃんじゃない」


「天鬼、はん…?何言うてはんの?」


お千代ちゃんは不思議そうな顔をしてる。


僕は赤くなっているであろう顔を見られたくなくて、お千代ちゃんを抱きしめた。


「天鬼はん!?」


「…僕は、お千代ちゃんが好きだよ。幸せになってほしい」


「その好きは…どういう…」


どういう意味?


そんなの…決まってるじゃんか。


「男として、お千代ちゃんが好き」


それ以外、ない。